sunn coliseum bass

Written by Eiji Farner




Sunn Coliseum bassです。

かつてBBA時代のティムボガートが愛用し、1973年の日本公演では正面客席で目を輝かせる青年・鳴瀬喜博氏のその後の人生を決定付けた “ 幻のアンプ ” です。

その鳴瀬青年が36年後の2009年に遂に自らの原点であるティムボガート探究に再び立ち上がり、翌年にはTIMチョ&宴ROCKSを結成し、このTim Bogert Maniac 名誉教授となった経緯はハードロックベースマニアの誰もが知る処なのですが、実は宴ROCKS結成当時から今日まで、2年以上も世界中を探しまくっていたのに見つけられなかったのが、このSunn コロシアム だったのです。

なので我々にとっては本当に幻のアンプなのです。

「ふーん、この型のSunnなら、70年代に一世風靡したし、珍しくないんじゃない。」

と言う声が聞こえてきそうですが。。。

甘ーいっ!

それは出力150Wattの「コンサート」でしょ。

 

コンサートならば、このトーリ、既に大量にチェック済みです。(笑)

今回発掘した「コロシアム」は、コンサートの2倍。

出力300Wattのオバケアンプなのです。

 

なぜこれほどまでにコロシアムが見つからないかというと、いくつかの理由が推測できます。

恐らくは「コンサート」も凄まじい爆音アンプですから、「コロシアム」に至ってはアリーナクラスでライヴを行うようなプロフェッショナルのみ御用達であった為に、圧倒的に生産台数が少なかったのではないか。トカ、そういうプロ御用達であった為に、過酷なツアーで酷使され壊れてことごとく廃棄処分された。トカ、真空管アンプのように消耗した心臓部品を交換できないが為に、修理不能となって絶滅したトカ。

とにかく生きたコロシアムが見つからない。

 

 

で、

遂に捕獲されたコロシアムは、ご覧のトーリ、美しいコンディションを保ったピチピチに生きが良い極上品。(祝!)

 

今日まで、宴ROCKSでTIMチョ氏が愛用していた Sunn 100Sは、マウンテンを愛する厚見玲衣さん所有の出力100Wattの真空管アンプでした。




このアンプを借りて、極上のディストーションベースサウンドを炸裂させるTIMチョ氏の
音のデカさは定評(?)ありましたが、
遂に手に入れたコロシアムは、“あの爆音”の 3倍。

定評が不評・酷評(?) となるに充分な音量であることは
皆さん察しのトーリです。(笑)


サテ、このアンプが発掘された感動のエピソードを紹介させてください。





その聞きたくなかった知らせが届いたのは2012年6月4日の昼頃でした。

「ジョニー吉長、永眠。」

1979年7月14日に日比谷野音で行われたFree Spirit。
筆者にとってそのコンサートは、まるで映画で見たWood Stock そのもののような体験でした。
まだ15歳でしたが、その日の夜、ボクの人生の歯車が鈍い音を立ててフラフラと回り出し、そのまま現在に至っています。


ジョニーさんの歌うようなキックに魅せられてボクはドラムとベースという低音の作り出す音楽の土台、ビートというモノを知って、それまでギター以外に全く興味のなかったガキが、ドラムやベースにどんどん心酔していって、こんなにも重症の楽器オタク暴走機関士になってしまったのです。
そしたら、そのRailtoadの軌道上で、次々と素晴らしい出会いに恵まれ続け、こうして鳴瀬さんにも出会えたのです。


って、以前に鳴瀬さんにお話した事があったんです。
それを憶えていてくださった鳴瀬さんが、御自身も哀しみに消沈されている中で「お前はジョニーが好きだったよな。残念で仕方ないよな。」って真っ先に連絡をくださって。

もうね。
平日の仕事中だったんですが、
号泣です。
ボロボロ涙が溢れてしまって、慌てて会社のトイレに駆け込んで、わーわー泣いてしまいました。

尋常じゃない様子を察した隣席の女性が心配してくれて一言。

「何か悪い物でも食べたんですか?」って。(笑)

 

おっと逸れた。

で、その日の午後にはネット上でも訃報が報道されましたが、どこよりも早く、僕達ファンに知らせてくださったのも鳴瀬さんのブログでした。
鳴瀬さんとジョニーさんは年齢も一緒、バックスバニーで日本最強と呼ばれたリズムセクションを長年御一緒に組まれていたのですから、その御心情を察するに、ボクなどに配ってくださる心遣いと優しさが沁み入るほどに、その日は何度も何度もトイレに駆け込み。。。
ほんとうに長い長い夜になりました。


そして翌朝。
いつもと変わらない通勤電車の中で一通のメールを受け取ったのです。

「2年以上見つからなかったコロシアムベースが、
ついさっき、見つかった!」




それは数時間前、(って、つまり夜中ね) まで「鳴瀬さん、きっと気を落とされてますよね、心配ですよね」って話し合っていた厚見さんからでした。
「寝ないんですかっ!(笑)」 なんて返信メールを書きながら、

ハッ!って。

これって!
ジョニーさんからの!
鳴瀬さんへの贈り物だ!って。

まるで、自分は先に行くけど、ずっと爆音で転がり続けろよ。
音量を下げてはダメだぞ!

っておっしゃっているようで。



これはもう、ナンとしても鳴瀬さんの元に届けなければって思ったのです。
たぶん。それはジョニーさんが最後にボクに与えてくださったメッセージだと、もう勝手に妄想炸裂です!(笑)
「お前が、ナルチョの為に行動すんだぞ。」
もうね、ボクにはハッキリ聞こえちゃったんです。

早速、厚見さんからの情報を追いかけてみたら、
発掘されたのはアメリカ東海岸の楽器屋で、なんと「海外へは売らないよん」だと!
「ぬわにぃ〜、ならば奥の手っ」 ボクにはアメリカに住む大親友が居るので、すぐにメールでお願いすることに。


「アイヲントコロシアム、ヘルプミー!」

すると10分後にメールが戻ってきて、

「Hello Eiji. I bought the amplifier for you. 」と。

ボートって!「買う」の過去形 「買った」 だ!
もう、すぐに行動してくれて、買ってくれたんかいっ!早っ!感激っ!

で、慌ててお金を送ったり、ナンヤカンヤとバタバタしつつ、数日が過ぎ。
ある日家に帰ったら玄関先にドデカイ箱が届いていたという。(笑)

いやいや、ナンボナンデモこの箱はデカすぎるだろ。

なぁんて厳重に梱包してくれたんだ。ありがたいなぁ。。。

なんて感激しながら箱を開けたら。。。

アレ? なんか変だ。 尺度がおかしい。。。

見たことないくらい。。。

デカいっ!
なんじゃコリャ!(爆)



梱包されてた箱は異常に大きいけど、
中身に対して大きくない。。。(笑)


「たいへんです、凄いデカさです!」

「もう音出したのか?」

「いえ、サイズがデカいんです。写真を送ります!」




  


ジャズべースのボディエンドから4フレットめまで。
レスポールのボディエンドからナットまで。
楽器を持ってる方は今すぐチェックしてみてください!


ね。デカいでしょ!

ツマミの直径は5センチもあります。
缶コーヒーの直径よりデカいんで、見ているだけで喉が乾きます。


 


上に乗っている100-Sのツマミが半分の大きさに見えますが、
100-SのツマミはFenderアンプと同じ普通サイズです。


中はこうなっています。

 

 

強烈なSUNNマニアの方は、このアンプの外観が
70年代後期デザインである事を御存知でしょう。

そしてティムボガート信者の方の中には、「ティムは初期型だろ。」
とツッコミを入れたい方も居らっしゃるでしょう。

が。しかし!

外観のデザインがカッチョ良くなっただけで
中味は全く同じである事を知っていてこそ、

真のSUNN & TIMマニアなのです。

1973年のBBA来日公演で、鳴瀬青年のその後の人生を決定づけた
最強アンプ、コロシアムです。

あまりにもデカいんで、天気もいいし撮影も屋外で。

 

あれ?

これじゃBBAぢゃなくて、なんかBBQっぽい。(笑)

 

― Like a Rolling Stone ―


転がり続ける石のように。


ロック好きな方ならば、その意味を知らない人は居ないでしょう。
行き先のあてもなく彷徨う風来坊というか、旅を続ける流れ者をそう呼ぶのですが、実はもうひとつ別の意味がある事は日本ではあまり知られていません。

動かない石にはコケ(苔)が生え、やがて黒ずみ森に同化してしまうが、転がり続ける石には苔は生えない。
常に表面は磨かれ続け、すなわち新たな挑戦を常に続けるフロンティア精神を意味する。

つまり、終わりなき旅人は、そこにフロンティア精神がなければ只のホームレスでしかなく(笑)、Like a Rolling Stone の意味する処は、立ち止まらない人生というか。。。
あ、真面目な話題、苦手なんだった。(笑)

で。

このアンプがこのタイミングで見つかったことや、たくさんの“友達”のサポートを得て手に入れる事が出来たことに、もしも誰かの意思というか、必然性とか理由のようなモノが存在するならば、それこそが Like a Rolling Stone 「爆音で転がり続けろ」っていうメッセージなんじゃないかカナとボクは感じています。

ボクはこの、悲しいけれど優しさに溢れたエピソードを、勝手に“Johnnyの奇蹟”って呼んでます。

 


後書。(私事です)

ジョニーさんが亡くなって、コロシアムが発掘され、遂にコロシアムが日本に届いた数日後の、7月4日。
下北沢でジョニーさんのお別れ会がありました。

ジョニーさんが静かに歌うLOVE CHILDがBGMとして流れる会場の中を、ゆっくりと進むファンの参列の中に身を置き、少しずつ少しずつ祭壇で微笑むジョニーさんの遺影に近づくと、最後の御礼が言いたくて来たのにボクには感謝を伝える言葉のボキャブラリィが全く足りていない事にようやく気づいて狼狽しまくってしまったのでした。

手を合せ、ゆっくりと目を閉じたものの、「えっと、えっと。。。。あ。鳴瀬さんにコロシアム、ちゃんと届けました!」って、咄嗟に。(笑)


そしたら。


その瞬間、ちょうどBGMの曲がジョニーさんの代表曲に切り替わって、その歌詞の冒頭が。

「ありがとう。」 って。

もうね。その瞬間、「えっ!?」 って。
耳元で、ジョニーさんの声で、「ありがとう。」って、もうハッキリ聞こえてしまって、思わず後ろを振り返ってキョロキョロして、「あ、曲か。びっくりしたー」って。(笑)
その場にしゃがみ込みそうになるくらいドッキリしました。

映画みたいでした。(笑)
ほんとに。

「ちゃんとお届けしましたよ。」
「おう、ありがとな。」っていうタイミングですよ。まさに。

ホラー映画じゃないですよ。恋愛映画。(笑)
男同士だけど。(笑)


これ、ほんっとうに実話です。

「ああ!お礼を言いにきたのはボクのほうなのにィ!」ってドバって涙が溢れてしまったんだけど、不思議なことに、それまで悲しくて悲しくて仕方なかったのが、フワっとした優しさに包まれていました。

「ジョニーさん、そうやってボクみたいなファンのひとりひとりとお別れを言ってくださるんですね。」って、あったか〜い気持ちになっちゃったのもホントのホント。




ジョニーさん。ナニモカモほんとうにほんとうに、


ありがとうございました。


で。さらにすごい後日談。
このアンプが届いたタイミングで鳴瀬さんはTIMチョの変身を解いて、カシオペア3rdの再始動に奔走されていました。
「11月のバースデイライヴ“宴暦”まで、コロシアムの出番はないなぁー」
「ほいじゃ、預かっておきます」とゆー事になって、コロシアムのデビューは11月“宴暦”ということで計画されたのでした。


がっ。
コロシアムのデビューは、突然、実現したのです。

「来週末、空いてるか? 9月1日に、Charとライヴやる事になったぞ!」

「ワオー!お供させてくださいっ、コロシアム持っていきます!」

で。なんと。
コロシアムの筆下ろしは、急遽決定したCharさんとのハードロックトリオとなったのです。

そのライヴが。

ほんっとうに、凄まじかった!

ボクが近年見たライヴの中でも、間違いなく最高の演奏でした。

 

 

それはまるで。。。ボクの人生を変えられてしまった、あの1979年7月14日に日比谷野音のJohnny Louis & Char のフリーコンサートを見ているような衝撃そのものでした。

Charさんがジョニーさんに捧げるOnly For Your Love (JL&Cの曲)を歌い、
鳴瀬さんが爆音コロシアムで曲を彩るその光景は、まさに。

“Free Spirit”そのものであり、これこそが、ほんとうの

“Johnnyの奇蹟”なんだ!って。


もう、ハードロックを聴きながら、ボロボロ泣いて。
なんだ、このシーンの為に、コロシアムは用意されたのか!って。

会場中のお客さんも、出番を終えて既に楽屋でくつろいで居らした他の出演バンドの皆さんまでも、「なんなんだ!このすげえベースの音は!」って、騒然となったほど、物凄い爆音でティムボガートスタイルのハードロックベースを弾きまくる鳴瀬さんのプレイと、まるで33年前の“あの日”のような強烈なロックギターを弾きまくるCharさん。
ドラムの古田たかしさんも、気迫に満ちたドラムを叩いて、2人の壮絶且つ、絶妙な演奏を支えられて、「こんな凄い世界があるのか!」って教えてもらった33年後に、ボクは再び同じ体験に身を置き、「な。ほんとうにあるんだよ。」って、あらためて教えてもらえました。


そこに居ないジョニーさんが、まるでシナリオでも用意してくださったかのように偶然に偶然が重なって、気づいたらここに連れてきてもらえていたように感じながら。





このコラム。
コロシアムっていう、爆音ベースアンプを“自慢”しようと書き始めたコラムなんですが、あまりにも素敵な(それは同時に、とても悲しくもあるのだけれど)いろんな出来事が次々と起きて、ハナシがあっちこっちトッチラカッちゃいました。


鳴瀬善博青年が1973年に欲しくなったアンプはそういうアンプだったという。

アンプは道具でしかないですし、そこに音楽と素晴らしいミュージシャンが集ったからこそ起きた“奇蹟”のエピソードなんですが、全てが単なるボクの個人的妄想にしてはあまりにもドラマチック過ぎて。


これ読んでくださって、「コイツ、変。」って思われてますね。きっと。(笑)
でも。TIMチョ&宴ROCKSで炸裂するコロシアムの尋常ではない凄まじいサウンドを浴びればきっと分かって頂けると思います。


この音なら、奇蹟って、ほんとうに起こるかもしれない。って。(笑)

 

サテ。これでこのアンプの全てを語れたかというと。。。ムフ。
下の写真をご覧ください。




ティムボガートが使っていたのと同じ
初期型コロシアムのフェイスパネルです。
なぜか、手に入ってしまいました。(笑)

つ・ま・り。

この暴走機関車コロシアム号の旅は、まだまだ転がり続ける。

という事のようです。

ぜったい、誰かの意思に導かれてます。



つづく。。。(笑)



written by Eiji Farner



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