Harmony / Holiday Stratotone, 1p.u.

MARK FARNER少年が始めて手にしたエレクトリック・ギターがこのStratotoneです。

1948年生まれのMARK少年は15歳にしてギターを始めたそうです。当時のアメリカ市場で最大のシェアを誇ったHarmony社製ですが、この仕様のモデルはHOLIDAYブランドで売られた物のようです。

資料によると当時Harmony社は有名な通販最大手のシアーズローバック社向けブランドの“シルバートーン”や、この“ホリディ”など、多くのブランドへ楽器を供給しており、基本的にはStratotoneをベースに各社向け色々な仕様のモデルを作っていたようです。

一般に入門用スチューデント・モデルのチープなギターとして評価されていますが、60年代のローカルなクラブバンドなどプロにも愛用者が多いギターです。ドンの最初のバンド、JazzMastersのギタリストもStratotoneです。このギターは恐らく通販用としてコストを抑える為にシンプルにアレンジされた仕様のようです。

この1ピックアップ仕様、トラスロッドの無い仕様のモノは、Harmony社のカタログやSilvertoneのLineUpには無いようで、もしかしたらHOLIDAY社専用だったのかもしれません。

MARK少年のモノは参考写真の通り、ピンクがかった赤いボディで、通常はネックの裏までカラー塗装されているハズなのですが、いわゆるハギ・ナチュラルとなっているように見えます。黒とサンバーストのモデルは見たことがあるのですが、赤系は見たことがないので(レア?)もしかしたら、MARK師匠の得意技「ペンキ・リフィニッシュ」を、この時すでに施されていたのかもしれません。

なので早速、黒からサーモンレッドにリフィニッシュしてみました。(ネックは入手時すでにハギ・ナチュラルでした。)

入手時にはピックガードに赤マジックでイタズラ書きがあり、譲ってくれた方いわく『このサインはZZ TOPのビリーギボンズだ。アーカンソー州のレコーディングスタジオで書いてもらったんだ。』との話しなのですが、どうなんでしょう?酔っ払って書いたとしか思えない達筆だし、どうもウサんクサイです。なので、ピックガードは交換してしまいました。これはMARK FARNER少年へのリスペクト・アイテムですので。

サテ。何でこんなギターまで。ようやるわ。と、言われそうなのですが、アナドルなかれ!ここにアノ GRAND FUNK サウンドの“誕生秘話” が存在するのです!

っていうか、トアル疑問からヒモ解いて行ったら、答えは想像以上に「推理通り」だったのです。

トアル疑問とは、

「何で、メルはフェンダー、ドンはラディックなのに、MARK師匠は、メッセンジャーなのか。」 という点です。

何気なく見ていたGFRヒストリーの中に、このStratotoneを弾くMARK少年の写真を見て、気付いたのです。『アレ、このヘンなギター、なんかメッセンジャーっぽいぞ。』と。

となれば、探しまわって、遂に発見しまして、弾いてみて、バラシてみちゃうワケです。

で。大ビンゴ。

以下に、このStratotoneがイカにメッセンジャーに似ているかをまとめました。
ご納得頂けると思いますよ。

? サウンド (最も重要!)

メッセンジャーと「同じ」DeArmond のピックアップが、メッセンジャーと同じマウント方法で、メッセンジャーと同じサイズの箱ボディに掲載されています。私は今までたくさんのギターで初期GFRサウンドの“代替”に挑戦してきましたが、これは本当に「おんなじ音」がします。GibsonでもFenderでも出せなかった音が、「ありゃ。一発で出た。」っていうくらいに。。。

初期GFR の全曲でMARK師匠はメッセンジャーのフロントピックアップしか使わないのですが、ご覧の通り、このギターのピックアップはフロントのみ。

つ・ま・り!この音(アノ音)がMARK師匠は、大好き。っていう事なワケです。(私も大好き!GFRファンの皆さんも大好き!な音なワケです。)

? ネック其の1

ナント。フレットが少ない為にやたら短く見えるスケールはメッセンジャーと同じ通常スケールです。

この写真は2本のギターのブリッジ位置をそろえて撮影しました。ブリッジからナットまでの距離が同じである事が確認できます。(先に述べたフロントピックアップの位置も全く同じです。)

そしてメッセンジャーネック最大の特徴、ナットからハイポジションまで幅が均一。というのも同じです。初めてメッセンジャーを弾いた時に「なんじゃこりゃ」と感じた“均一幅ネック ”。なんでこんなヘンなネックのギターをチョイスしたのかな?と、実は最近まで思っていたのですが、当のMARK師匠御本人は最新のインタビューで「メッセンジャーはネック幅が均一なのが、いーんだよ!」と申されており、「ふうん」などと読み流していたトコが私の修行の足りないトコです。

た・ぶ・ん。このStratotoneを愛して、本当に弾きまくったのでしょう。そして均一幅ネックこそが、MARK少年のスタンダードだった。のではないでしょうか。

ペグの並びも3対3がスタンダード。6連はアリエナイ。。。とか。

? ネック其の2

よーく見ると、ブリッジからテイルピースまでの距離までもがメッセンジャーと同じです。つまり、テンション感も同じだし、この部分の反響音(コレ、重要です!)も同じなワケです。

誰もが必ず。この部分を「クリリン」と弾いた事がありますよね。この「クリリン」の音程が、『おーっ!』っていうくらい、メッセンジャーと同じです。

「こいつバカだなぁ」と言われそうなのですが、アナドってはなりません。
GFR熱狂のステージの最後を飾る名曲 『 In To The Sun 』の最後のガーッって盛り上がるトコで、MARK師匠はこの部分をかき鳴らすのです。

ひざまずき、髪を振り乱し

「クリリリリリリリリリリリリリリリーン」

と。

つ・ま・り。このStratotoneは、In To The Sun が出来る!ワケです!

? ボディ

メッセンジャーと並んだ写真をご覧ください。ボディの厚さは、メッセンジャーと全く・完全に同じです!

そしてボディの大きさもほとんど同じです。これはどういう意味があるか。というと、抱いた時に、ほんとうにびっくりするほど、そっくり同じギターと思える印象なのです。

ヒジに当たる感触というか、ウデの当たる位置が、メッセンジャーを弾いている錯覚に陥るくらい。そして弾き手の視線での見た目(上からボディサイドを見下ろす景色)も、そっくり同じなのです。

これは、先にメッセンジャーを弾いた私の感想で、恐らくMARK青年にとっては 『おお!Stratotone にそっくりじゃねえか。』と感じられたハズです。

ところが一点だけ違うトコがあるんです。

見た通り。Stratotoneはネックがボディに入り込んでいて、ハイポジションが弾きにくいのです。

そしてメッセンジャーは対極的な程、ネックがボディからツキ出ています。その差は2フレット分。いつものようにBmを押さえてハートブレイカーを弾くと、2フレット分ネックはボディに寄っていますのでAmになってしまいます。(これには参りましたが対策がアリまして、ジミヘンみたいにギターを身体の正面にブラ下げず、ネック側にギターをズラして肩からブラ下げればOKなワケです。ジミヘンみたいにピッキング位置がヘソよりネック側になりますが。)

私は「同じサイズのボディとネック」と説明しましたが、ご覧の通りメッセンジャーの長〜いテイルピースの変わりにStratotoneには短いテイルピースが装着されており、つまりこのテイルピースの寸法分だけネックがボディに入り込んでいるというワケです。

で、MARK青年にとっては、これは弾きにくかったハイポジションへの不満がイッキに解消する事なワケで、『おー!メッセンジャー。最高じゃん。』 と。

余談ですが、MARK師匠のギターソロって、ハイポジションが少ないんですね。Inside Looking Out の GのKey(15〜18フレット)あたりが一番上で。。。あれ?気付かれましたか。そうです。このStoratotoneの、一番上は、そこまで。なんです。

つ・ま・り。やっぱりMARK少年が練習しまくったトコまでが、後のGFR楽曲のギターソロを構成しているワケで、MARK師匠のオリジナリティ溢れるスタイルは間違いなく、このギターによって培われたのでしょう。

後のインタビューで「一番最初に作った曲はハートブレイカー。」と語られておりますので、あの歴史的名曲は、このギターから生まれたワケです。

分解していて気付いたのですが、メッセンジャー同様にDeArmondピックアップの裏面には、やはり製作日がスタンプされていました。1963年製。MARK少年がギターを始めた正にその年です。『ああ、ほんとうにこのギターからスタートされたんだな。私たち多くのファンは、その瞬間にやっぱり感謝しなきゃ。』などと考えながら、容赦なくペンキ・スプレーをふりまく私でした。

そうそう。MARK師匠ご愛用ギターの大半が「赤」系の色なんですね。その理由までもが、この古くて愛らしいギターにあるように思えます。

THE ROOTS of GRAND FUNK RAILROAD。。。。
私はそう思っています。

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