第IV章  Marshall Manaic


この日のライヴの約2か月前、
3/29川崎クラブチッタで行われたJapanese Progressive Rock Fes 2014に、
昨年の5/18以来約10ヶ月ぶりに再集結したMOON DANCERが登場しました。



 




“事件”はこの日、起きました。


時系列を追って説明しますので、先ずは、めったに公開することのない
リハーサル光景をご覧ください。




    

このトーリ、ムーンダンサーはリハーサル段階から機材をほぼ全部持ち込んで、 演奏やサウンドバランスのリハーサルと同時にヴィンテージ機材のコンディションチェックを行います。

ツアーバンドであれば常に機材のコンディションは把握できますが、このバンドの活動は時空を超えてのモノなので(笑)、それこそムーンダンサーでしか使わないVintage KORG などは、毎々祈りを捧げてから電源をONにする必要すらあるのです。

でもそれがけっこう楽しかったりして、スタジオに運び込んで、ケースから出して、美しく積み上げて、全部の音がちゃんと出てくれると、神聖な気持ちというか壮大なる満足感に満たされてしまい(笑)まだ演奏が始まってないのに、既にひと仕事終えたような気持ちになったりすらします。

記念写真撮っちゃったりして。(笑)



もちろん何から何まで全てが緊張を伴なうヴィンテージ機材という事ではありません。
電源機器やシールド、エレクトリックピアノ(YAMAHA CP-300)、最新の音響エフェクトやベースシンセ、デジタル制御式のギターアンプなど、いくつかの高品質な“安心”も導入しています。

なのにですよ!

あの事件が起きてしまったのです。

プログレ・フェスの会場を埋め尽くしたお客さん全員が
「いったい何が起きているんだ?」と、
ざわめき立たせてしまった、痛恨のトラブル。


ぬわんと。ヴィンテージではない、“安心機材”であるハズの、
デジタル制御式ギターアンプの大暴走。


あの日のトラブルは、PAオペレーターさんのミスではありません。

唐突に音量が制御不能の暴走状態に陥ったGアンプに起因したものだったのです。

ですがそのことが判明したのは、ライヴ終了から数日後、アンプメーカーからの点検回答を得ての事でした。

メーカーさえも把握していない前代未聞の“大暴走”ですから、その場に居たベテランミュージシャンもベテラン音響スタッフも、誰もが首をかしげたまま、Gアンプがそんな事を「しでかすことができるなんて」連想することすらできなかったのです。

空を見上げて、「え!ペンギンって飛ぶの?」みたいな。(関係ないか)


考えてみたら、生産されて10年も経ったパソコンを今でも業務に使っているPC専門家は居ないワケで、デジタル制御の信頼年数に関しての統計データは、少なくともGアンプという大音量や振動に曝され続ける道具に関しては10年前の人類は把握できていなかったのではないでしょうか。


ヴィンテージには経年劣化というリスクが伴い、メンテナンスという義務が生じるのですが、デジタル制御楽器は「安心・簡単」というイメージに裏に潜むもっとヤッカイなトラブルが、ことライヴという特別な場面に於いては付きまとう。という事を学んだワケです。

注:本文は体験談をそのまま記したものであり、全ての楽器に
リスクはあるので、 デジタル制御機材の全てを否定したり
不安を煽っているものでは御座いません。
当然筆者もたくさんのデジタル制御機材を所有しており、
その利便性の恩恵に授かっています。



で。ここまでが前置きで、ここから楽しい楽しい、
めくるめくメイニアックな世界のおはなし。


5/18ライヴまで時間的猶予もあまりない状況下、プログレフェスで暴走したGアンプの修理が間に合わなかったり、キチンと原因解明できなかった場合を想定して、ムーンダンサーのサウンドに適したアンプを念の為に選んでおいた方がいいんぢゃなかろうか。と。
勿論言いだしっぺは厚見さん。

トナレバ、ムーンダンサーのサポートチームGRAND FUNK MANAIC の仲間が所有するアンプをズラリと並べて、一台一台比較したら、さぞかし楽しくて圧巻な画になるんぢゃなかろうか。(←既に趣旨が脱線気味)

トナレバ、そこはやはり。沢村さんにアラベスクのギターソロを弾き比べてもらったら楽しいんぢゃなかろうか。(←脱線転覆)

で。都内某スタジオに山ほどアンプを持ち込んで、この光景です。




沢村さんには、

「修理がうまく行かなかった場合を想定して、
予備のアンプを選んでおきたいんで来てください。」

と。(ムフ)

で。沢村さん到着前にズラリと並べて、待つこと10分。

「沢村拓さん、到着しました!どうぞ!」


「えええー!予備のアンプを選ぶって、この壁はナニ!?」
(全員大爆笑)




はい。もうお分かりですね。

この、沢村さんが、じぇじぇじぇ〜!ってなった時点で、
このMarshall Manaiac を提唱するスタッフ一同と厚見さんは
壮大なる満足感に満たされ、(笑)
すでに大きな目標を成し遂げたような気持ちにすらなっているワケです。

 


「やっぱり、あの時代にレコーディングで鳴らした音がするね!」

と、沢村さんと厚見さん。

マーシャル・メイニアックというタイトルなのに、なんでフェンダーのアンプが何台も持ち込まれているかというと、マーシャルアンプを使ってレコーディングしたものと思われているスタジオ録音のアラベスクのギターソロは、実はレスポールとフェンダー・ツインリバーブだったからなのです。

つまり、この催し。 サブタイトルは、

『アラベスクのギターソロ・メイニアック』
だったワケです。(笑)



「アラベスクのギターソロは、日本の音楽史屈指の名演!」

by 厚見さんとボク。


で。この機会にと、ヴィンテージギターもこのように持ち込まれ。






で。これだけたくさんの極上アンプの中から、沢村さんが選んだのは、




中央に鎮座する、いちばん小さいマーシャル、Blues Brakers でした。

整流管をシリコンダイオードに交換し、内蔵チャンネルがリンクするように
モディファイされたこのアンプ、
なんとパワー管はフェンダーに使われる6L6管であり、
ここでもフェンダー的なニュアンスが香ります。

(あ。 よく見たらオーナーのERIチャンも写ってますね。)



「凄く良いアンプだね。でも、このアンプ一台だけじゃ
ライヴでムーンダンサーを演奏するには足りないんですよ。
数種類のサウンドバリエーションが必要になるんで、
最低でも3台を選んで、ズラリと並べなければならないんで、
運搬もセッティングも大変になっちゃうよ。」 (沢村さん)


「問題ありません。3台でも4台でも運びますよ!」(スタッフ一同)


がっ。ぬわんと。


片手で運べる、いろんな音が出せるデジタル制御Gアンプが
本番直前に修理から戻ってきてしまい(笑)、
これらの“壁”の全てが御蔵入りになってしまったのでした。
(で、これまたみんなで大爆笑!)


「でもさ、あんなにいろんな音色でアラベスクのギターソロ生演奏見れて、
最っ高だったねー!」(スタッフ一同と厚見さん)


 



ち・な・み・にっ!


そんなMarshallの壁を崩落させた、デジタル制御Gアンプ君ですが。


5/18ライヴを御覧になった皆さんが、御存知のトーリ。。。。


ぬわんと!

最後の曲で、、、


フって。



音、出なくなりやがった!!!!!!!!!!!!! 


ムキ―――――――ッ(大激怒!)


で。気持ちを落ち着かせるために、もう一度、この光景を。(笑)






ああ、美しい。。。うっとり。。。


Written by Eiji Farner






第V章  Arabesque Manaic

   





 

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