2014年暴走機関車の旅

第 II 章 “サンディエゴの奇跡”

written by Eiji Farner

で、翌朝。

フト。ポケットをまさぐったら、コレが出てきました。


リバーサイド・シアター最前列の席は、腕を伸ばさなくても手の平を前に差し出すだけでマーク尊師の御身足に触れてしまうような距離でしたので、終始その衝動をグッと我慢していたボクですが、演奏を終えてステージを去った後に、マーク尊師の立っていたステージ上をそーっと擦ったりポンポン叩いたりして、今ここにマークファーナーが立っていたんだ!って感動にフケっていたら、目の前に「置いてあった」のが、このピンク色のピックでした。

世間一般的には「落ちていた」ともいうんだけど、演奏中にマーク尊師はピックを落とさなかったし、投げたり捨てたりしなかったので、誰かがボクの目の前に置いてくれたとしか思えないので、置いてあったピックなのです。

マイクスタンドにピンク色の予備ピックが付けてあったのを見逃しませんでしたので、「あ!尊師のピックだ!」って、すぐに分かったんですけど、


ステージ上に置いてあったピックですし、
恐れ多くて勝手にもらってしまうワケにもいかないので、
とりあえず拾得して(笑)、終演後に親切にしてくれた
ローディさんに尋ねました。そしたら

「それはマークのピックだよ。君は幸運だね。
それは君のものだ。」
って。
(≧▽≦)

で、もちろんマーク尊師にも
「あのお、これ拾ったんですが。。。」と見せたら、

「私はそれが気に入っているんだよ。君にあげるよ。」
と!(≧▽≦)


ね。よくぞ気絶しないで帰ってこれたでしょ。(笑)

もう一枚の白いピックは、マーク尊師を待っている間に、タートルズのMark Volmanさんがステージに戻ってきたので、「素晴らしいショーでした!ありがとう!」って声をかけたら握手してくれて、その握手した手の平の中にこのピックが残っていたのです。


左の巨漢のおじさんがMark Volmanさん

彼はマジシャンとしても有名だそうで、いったいいつピックを手の平に用意したのか、まったく気づかなかったので、このマジックにビックリ!
彼はボクと握手する前に、2〜3人の関係者らしき人とも握手を交わして、その流れで立て続けにボクとも握手をしてくれたので、どうやって最後に握手したボクの手の平の中だけにピックを仕込んだのか、ほんとうに不思議でした。

一瞬。

え?あれ?ここまで起きた事って、
まさか全部、夢?


って、慌ててポケットをまさぐって、(笑)
ピンクのピックが有るのを確認したのは言うまでもありません。

ピックには、HAPPY TOGETHER のロゴが印刷されていて、
これも生涯忘れられない宝物となりました。

そんなふうに次々と起こる奇蹟体験を無造作にポケットに突っ込んでしまって、翌朝になって「うお!」って。(笑)
いかに尋常じゃない夜であったかを、あらためて噛みしめて神様に大感謝だったのです。

ちなみにこれでもし、朝、目が覚めたら日本の自分のベッドだった。ぜんぶ夢だった。とかだったら即入院ですよ。(笑)






で、この日は早起きしての長距離移動。
目指すはサンディエゴです。



この日の朝の風景。まだ太陽が低いのでモヤっているけれど。。。




この日も、この青空!

ロサンゼルスに来るといつも思うのですが、
空がいっぱいあるんです。 視界の90%が空なのです。


で、車の中で、ニヤニヤしながらピックを眺めるボクと、
これをクスクス笑いながら運転するマークさん。


目指すサンディエゴは大親友マークパワーさんが幼少期を過ごした海兵隊の街。
アメリカ太平洋艦隊HOME BASEであり、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク戦争を経験した多くの退役軍人が住む街です。

マークさんの御父様も海兵隊員だったので、余生を過ごしたこの街に御母様と共に眠っています。
先ずは、そのお墓参りに。



墓石の並ぶ丘がどこまでも広がっています。

 

太平洋戦争で敵対した日本人であるボクがこの場所に立ち入る事に躊躇はありませんでした。
ボクが体験してきた数々の奇蹟をもたらしてくれた思いやりや友情、この突き抜けるような青空の下に穏やかに流れる平和な時間の中で、音楽という文化を自由に共有できる、今という未来に居ることが、争いを終わらせる為に命を賭した方々の築いた未来であると考えているからです。

マークさんのお父さんとお母さんにも、マークさんというかけがえのない大親友に出会わせてくれた“奇蹟”の御礼を言いたかったし。





そ・し・て、

陽が暮れかけて、再び。

マークファーナー・ライヴの開演です!


2011年にも訪れたサンディエゴ。
あのときマークファーナーに偶然お会いできたコンサート会場と
同じ会場に再び帰ってくることが出来ました!


これは2011年の写真。

このときお会いできたのと同じ会場です。

 

 

会場に着くと、そこにはリバーサイドでは
近づくことが許されなかったツアーバスが。
で、マーク乗ってないかな〜と、性懲りもせずうろつく。(笑)

 

近くで見ると、デカい!日本の電車くらいの大きさ。
青いバスが出演者用、黒いバスはスタッフ用なのかな?



最後尾には恐らく機材を載せる牽引車が連なります。
これも小さなプレハブ小屋くらい。

で、更に、それに追う、オタク2人を乗せたマークさんの車。(笑)


ツアー4号車と呼んでください。

で。もはや
いやがおうにも高鳴る興奮を抑えられずに居ると、遂に!




そこには3年前より、更にパワーアップしたマークファーナーが。

昨日のリバーサイドであれほどのパフォーマンスを披露して、
恐らく今朝、バスで長距離を移動したワケですから、
年齢に関わりなく疲弊しているに決まっています。

で、やはり他の出演アーティストがあきらかに前日より
エコノミーモードでの演奏をする中。

我らがマークファーナーは、明らかに、昨日より、


飛ばしています!!!!


その理由はすぐに分かりました。
このHAPPY TOGETHERというイベントは、60年代のオールディーズを懐かしむ世代をターゲットにした、いわば懐メロ的コンサートであって、観客は杖をついた老夫婦がお互いにお互いを支えあいながらゆっくりと座席まで歩を進めるような世代の方々ばかりでした。
ロック色の濃い演目はマークファーナーのみ。


HAPPY TOGETHER 2014 イベントフライヤー

なので前日のリバーサイド公演では、どの出演者も曲間で和やかなお笑いトークを交え、年齢層の高い観客向けの演出となっており、マーク尊師も例外ではなくタオルで汗を拭きながら股も拭いたりして観客の笑いを誘っていました。

それが、このサンディエゴでは一変して、マーク尊師だけはお笑い演出を排除したシリアスなパフォーマンスのみ。

マークファーナーは語りました。

かつてグランドファンク全盛期に支持してくれた
同世代のファン、 ベトナムで戦い、生きて帰還し、
この美しい夕焼けの下に集うことができた退役軍人の方々、
私のBrothers&Sistersをリスペクトしてる。

と。
そして、まさしく魂を込めた
凄まじいパフォーマンスを見せてくれたのでした。

3年前にも同じ光景を見たボクですが、3年という歳月の意味(老いであったり病気であったり)を考えればもうあんなパワフルなステージは2度と見れないと思っていたし、しかも3年前以上にほとばしるエネルギーを伴なった熱演を目の当たりにして、言葉を失い、只々唖然。

すると、前の席の知らないお爺さんがクルって振り返って、いきなりボクの手を握って叫んだのです。

「見てくれ!彼は私と同じ歳なんだ!
彼は、私の若き日のヒーローだったんだ!
そして今も彼は私のヒーローだ!どうだ!見てくれ!」



もうね、一緒に泣きましたよ。知らないお爺さんと。(笑)

たぶんボクはひとりだけ、ひとまわり世代が違うし、日本人だし、GFRのTシャツ着てるしで、目立っていたようです。会場では知らない方からいっぱい声をかけられたし。

そのお爺さんも、開演前に何度か目が合ったのですが、話しかけてくるかなって思ったら奥様と寡黙にされていて、もしかしたら日本人をお嫌いなのかな、とかって思っていたら、いきなり。
で、その光景を見て奥様が隣で泣いている。


気が付いたら、杖をついてゆっくりとしか歩けない老夫婦が、席から立ち上がり、シャウトしているし!

ゆっくりと吸い寄せられるようにステージに歩み寄る老夫婦も居る!
それが何組も、何組も。

まるで、あの「孤独の叫び」の野外ライヴ映像のように、どんどん観客がステージに押し寄せるんだけど、あの映像のように走り出す人は誰もおらず、ゆっくり、ゆっくり。

もちろん会場には警備員が居て、柵もあるのですが、警備員達は皆、微笑んでその光景を見ていて、そーっと柵をどけ、誰も制したりせず、御老人が転ばないように気を配っているのです。

こんなロックコンサート、
日本で見たことない!!!!

10年後、20年後に、ハードロックで育ったボク達世代も彼らと同じように老いるワケで、その時に「日本人は演歌」ってなるかっていうと、ボクはならない。

演歌を愛している方々は、若き日に愛した音楽が演歌なのであって、若き日にハードロックを愛したボク達はハードロックを愛し続けているハズです。

つまり、ボクは、10年後、20年後に必ず、日本で見られる景色を、GRAND FUNK というタイムマシーンに乗せてもらって、2014年のサンディエゴで見せてもらっているのだ!と。

グランドファンクの1971年初来日公演を当時小学2年生だったボクは体験できませんでしたが、グランドファンクによって日本で初めて開催された野外ロックコンサートが我々日本人に示した“未来”が、今は当たり前のように溢れている事を知っています。

 

ボクは、色あせることのないグランドファンクという音楽を、生涯誇りを持って愛し続けるであろうし、同じような価値観を持ったハードロック愛好家の方々が日本にはたくさん居て、ボクの見た未来で必ず集うんだという事を、目の前で命を削るが如く繰り広げられる滝のような汗にまみれ走り続けるマークファーナーの熱演を見て確信したのでした。




そしてこの日、忘れられないもうひとつのシーン。

会場はヨットハーバーに隣接した屋外であり、涼む夕陽で照らされたパームツリーのシルエットはまるで、イーグルスのホテルカリフォルニアのアルバムジャケットのようでした。

ちょうどマークファーナーの出演時が夕陽が落ちるタイミングとなり、闇空が迫る中で白いカモメが会場の周囲を騒がしく飛び回っていました。

明るく灯った照明が照らし出したマークファーナーの足下には、多くのファンが吸い寄せられ、手を伸ばし叫ぶ光景はまるでそこに“神”が降臨したかのようですらありました。




そして最後の曲は、Closer To Home。

ライヴ盤Caught in the actに於ける名演では、この曲の中間部で、打ち寄せる波の音とカモメの鳴き声が効果音として入っているのは、誰もが御存知の通り。

1975年当時、すでにステージ上にスクリーン映写機を導入していたグランドファンクは、このシーンで空を舞うカモメの映像を映写していたそうです。

これは恐らく1975年に武道館で撮られた写真です。

 
(撮影者:不明。もしこれを読んでくださったら連絡ください)


この日のステージは太陽が沈むの方向が、まるで絵に描いたようにステージの後ろ方向であり、沈む夕陽を背負う形で、しかも波の音とカモメの鳴き声が、まさにリアルに再現されるという“奇蹟”の演出。

その風景を背負い、マークファーナーが静かに、力強く歌います。

「I’m getting Closer To Home。。。」

と、その時!!!!

ステージを覆う屋根のちょうど真ん中から、
ひときわ大きなカモメが突然表れて、


フワリと。


もう、なにかの仕掛け演出かと思うようなタイミングで、
カモメがフワッって客席に向かって飛んだのです。


そのまま観客席の頭の上をフワッ、フワッって2周旋回して、
パームツリーのシルエットの向こうにスウ〜って
流れ去って行ったのです。

こんなカンジ。


これは合成写真ね。一瞬だったんで。


その瞬間、観客の全員が、空を見上げ、
そのカモメを目で追っていました。

マークファーナーも一斉に空を見上げた観客の目線を追って、
旋回するカモメに気づいたようでした。


そして、指を空に向けて立て、高らかに歌ったのです。

「I’m getting Closer To Home!」

こぉんな演出って!

ウソでしょ!今の見た?見た?

ウオォォォォォォオーッ!って。



これが、ボクが見た「サンディエゴの奇蹟」です。

だって、みんなが空を見上げてるとき、
杖ついてる人、誰も居なかったんですもん。

みんなが、真っ直ぐに立ち上がって、空を見上げて、
次の瞬間にみんなが隣に居る愛する人を抱きしめて。


その光景を見渡しながら、満面の笑顔のマークファーナーが、
あのギターソロを奏でたんですよ!

みんな抱き合っていて、ステージ見てるのボクだけ!みたいな。


ね。神でしょ!!!!


昔も、今も、ボク達の!




MAGIC MARKIE、Mark Farner

ボクに、この大地の上がどんなに素敵な場所なのかを
いつも体験させてくれる魔法使いであり、
ここに記した奇蹟は全て
ほんとうにボクが見てきた光景の話なのです。


毎日毎日、こんな体験して。。。日本に帰りたくない。(笑)






まだまだ、続きます。

第 III 章 “HAPPY TOGETHER”

翌日はいよいよ、ロサンゼルス公演へ!

Witten by Eiji Farner

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