前日の京都公演を終えたバンドは、全長約40メートルものリムジン Hankyudentetsu 号に乗り込み、神戸牛の街・神戸へと移動しました。
そして第3日目となるこの日の公演では早くも新曲 Born To Be Wild がセットリストに加えられました。リハーサルで突然、「なんか増やそうよ」「Born To Be Wild はどう?」「よしやってみよう」という会話から始まって、たったの一回だけ演奏したら「いーじゃん!」っていうことになって、そのまま本番でやってみたら、リハよりもっと凄かった。という。(驚!)
「もしもティム・ボガートが Born To Be Wild を弾いたなら。」というTIMチョ&宴ROCKSだけにしかできない、凄まじい爆音ベースによる演奏は、まるで荒野のハイウェイを疾走するハーレーダビッドソンを後ろから来た戦車が地響きを立てながら追い抜いていくような光景でした。
この、戦車が疾走するようなグルーヴこそが、TIMチョ氏の愛して止まない「ティム・ボガート・スタイル」凄まじさであり、バンドは第3日目にして早くもベスト・パフォーマンスを披露することになったのです。
いやはや、全ての曲が凄かった!
この日の会場が、これまでの2会場よりも天井が高く、PA装置も大きかったことで、TIMチョ氏の放つ重低音を素晴らしい音質で響き渡らせることができたのも、ベストパフォーマンスを生み出した要因のひとつでしたし、もちろん夜の三宮にくり出しての打ち上げが楽しみだったことも要因のひとつだったのは言うまでもありません。
がっ。
メンバーもスタッフも酔いしれる最高の演奏であったこの夜に、バンドは衝撃的な現実の壁にブチ当たることになるのでした。最高に盛り上がる演奏を挟んでの、最高に盛り上がるMCの中で、「やっぱティム・ボガート・スタイルは最高だぁ!」って満面の笑みを浮かべるTIMチョさんが、
「いーでしょ。こういうハードロックスタイル。
この中で、ティム・ボガートを知っている人、手を挙げて!」
と訊ねてみたら・・・!
「はいはい、はーい!」と、手を挙げたのは・・・
ナント4人!
(しかもそのうちの3人は身内!)
失笑にも似た約50万人の笑いに包まれ、MC的には盛り上がっているようにも見える会場内で、ちいさく肩をうなだれたステージ上の5人ですが、その後の演奏ではまさに意地と誇りが爆発して、さらに熱を帯びた名演となったのは、このバンドのプロフェッショナル気質を語るにふさわしい光景でした。
最高のパフォーマンスとなった神戸大会。
にもかかわらず、心なしかちょっとだけ静かな打ち上げ・・・。誰も神戸牛を食べに行こう言い出さない中、ボクは想ったのです。
「これではいけない。ティム・ボガートを知らないなんて、音楽から得る人生の楽しみの半分を知らないままでいるよーなモンだ。」 鳴瀬さんが、TIMチョに変身して皆さんに伝えようとしているモノが、もっともっと多くの方々に伝わって欲しい!
そんなことを考えていたら、TIMチョから変身を解いた鳴瀬喜博さんボクの肩をポンと叩き、静かに、こう言ってくださったのです。
「なあ・・・みんなティム・ボガートを知らないんだな・・・。
でもさ・・・カレー喰いに行こうぜ!」
あっ、気にしてないっ!
まさにティム・ボガートみたいな方だ!(爆!)
翌朝、バンドは次なる宣教の地、広島へと旅立ったのでした。(続く)
Written by Eiji Farner