ワールドツアーから凱旋帰国した翌週、日本武道館原宿支店クロコダイルは超満員のティム・ボガート・ファンに埋め尽くされていました。東京中のファンが待ちに待った TIMチョ&宴ROCKS 初の山手線の内側での公演に、チケットはソールドアウト(←これはホント)。
この日は対バンがあり、TIMチョ&宴ROCKS は2番手で登場しました。登場時刻が遅かったために、宴もタケナワ、終盤のショットガンが炸裂する中、チラチラと終電時刻を気にして腕時計をチェックする観客が目立ち始めると、それを容赦なく踏み潰しにかかるTIMチョ氏のFUZZソロは凄まじいものがありました。勿論、誰一人として席を立つお客さんはいません。もう誰しもが、心にティム・ボガートを宿し、その爆音に身を委ねる快感から逃げ出すことなどできなかったのでしょう。
5公演目となるこの日、宴ROCKS には目を見張るひとつの大きな変化がありました。(まだ5公演めなのに!)
これまでに、TIMチョ&宴ROCKS は、まるで全盛期のカクタスそのものだ!と常々申してきましたが、この日の宴ROCKSは、各メンバーが突然インプロヴァイズされたアドリブを展開し、聴き慣れた名曲の数々をTIMチョ&宴ROCKS のカラーで演奏したのです。
もちろん事前に「今日はこうしよう」などという“音楽的な”会話は一切無かった(←その他はあった(笑))ので、これは全く予想していなかったし、つまり誰かのアドリブに誰かがアドリブで応えて展開しいくうちに出来上がった結果だったワケですが、これには自称カクタス・マニアの筆者はトテツもなく大きな衝撃を受けました。
なぜなら。カクタス・ファン、ティム・ボガート・ファンにとって永遠のテーマである、
「もしも今も神通力を失わずに続いていたならば、カクタスやティム・ボガートは、いったいどんな凄い世界観を魅せてくれていたのだろう」
という、あのテーマの答えが、この日のクロコダイルにあったからです。「たぶん、こうなっていただろう。」というような漠然とした予測などではなく、「いや、確実に、こうなっていたに違いない!」という確信を、TIMチョ&宴ROCKSは完璧に示してくださったのです。
ティム・ボガートなら、この展開になったら絶対にこう弾く。
というTIMチョさんの「アドリブ」にヒザをバシバシ叩きながらウナずいたのはボクだけではなかったハズです。その素晴らしさたるや、着ている服までが共振する“あの”空気振動の中に身を置く以外に伝える術などありません。もちろん他のメンバーの演奏も、それはまるでカクタスであり、しかしボク自身も聞いたこともないカクタスだったのです。
あたりまえの話ですが、コピーバンドがオリジナルを超えることは絶対にできっこないのは誰もが知っています。常々「オレ達はコピーバンド」とおっしゃっているTIMチョ氏ですが、わずか5公演めにして絶対にできっこない光景を目の前でやってのけてしまう宴ROCKSの凄さ。この日は爆音ベースに酔いしれた多くのティム・ボガート信者が、おそらく終電に乗り遅れたのではないでしょうか。
せっかくの、山の手線内公演だったのに。(笑)
Written by Eiji Farner