第 V 章 “Another Story of the Egg Man”

written by Eiji Farner

たしか1998年頃から始めたこのサイト。

いろんな事がいっぱい起きて、その都度 「信じれば夢は叶うんです!」って言い続けてきたのですが、
正直に言うと「これだけは無理だろ。」って思っていることも “当然” ですが多々あります。(笑)

たとえば。

なんぼ楽器ヲタクだからといって、見つけられない楽器もあれば、身分不相応な高額の楽器を買うこともできません。
住居に入らないサイズの楽器(ドラムセットとか、ハモンドオルガン&レスリースピーカーとか)は、当然ですが所有する事はできません。

サテ。

この話は、そんな“当然”をひっくり返してしまう、仰天の“GRAND FUNK MAGIC”が、
「Egg Man の奇蹟」の裏でもうひとつ起きていたとうお話です。

主役は、このサイトの管理人、ドン・ブリュワーを愛して止まないDonichi君です。

彼のGFR愛も、これまた凄まじいモノがあるのですが、(←長くなるので割愛。(笑))

トワイエ愛する家族を養う事が先決ですし、
住居スペースの問題で学生時代に購入したドラムセットを手放して以来、
保管できない、購入できない、欲しいセットは見つかりっこない。
という三重
苦に見舞われ今に至っている事は。。。

内緒でした。(笑)

なにせ、練習用のコンパクトなエレキドラムセットを「あげるよ」と申し出ても「置く場所が確保できないから」とバサリと断ってくるくらいですし、育ち盛りの子供達との幸せな生活の中で、「宵越しのカネはねえ!」と常々宣言している(?)ので、黒いヤリ形のシッポが生えているボクが、どんなに「ドラムセット買いなよ、買いなよ。」と言ったところで、「買えん。買わん。」とこれまたバサリと切り捨てられるワケです。

そんな事情もあって当サイトの Don Brewer Collection に掲載されているヴィンテージ・ラディックのドラムセットは、
バンド活動用に購入したEiji Farner 所有のドラムセットだったワケです。

で、その他ヤマホド有るヴィンテージ・スネアやスピードキング・ペダルは彼のコレクション。
(「買わん」と言いつつ、かなり買ってんじゃんね。)

で。そんな彼にもマークファーナー尊師からのメッセージカードが届いたのは皆さん御存知カト。

このカードに導かれてボクが体験してきた景色はすでにレポート済みですが、
同じカードを受け取ったDonichi君に、ナニも起こらないワケがなかったワケです。

カードが届いた数ヶ月後。日本で大震災が起きました。
ボクと Donichi 君は幸いにも周囲の皆が無事であり、楽器コレクションもまた全て無事でした。

ところが。
Donichi 君の奥様の御実家は福島県だったのです。

福島第一原発からは100km以上離れていたので放射能漏れの避難対象にはならなかったそうですが、地震によって築40年近い自宅は半壊で建て直しが必要でした。

東京での生活があれほどに大変な状況だったワケですから、御実家は筆舌に尽くしがたい大変な状況だったそうです。
Donichi 君は福島と東京を何度も往復して被災した御実家の片付けに奔走の日々を送っていました。

そんな大変な生活の真っ只中。

ボク達は何度も何度も話し合って、
グランドファンク・トリビュートバンド、どファンク マニアックのライヴを強行したのでした。

2011年5月5日、こどもの日。
どうしても伝えたいことがボク達にはあったのです。

2011年5月5日 四ッ谷アウトブレイク『 20世紀のレガロス 』

家族を連れて来た Donichi 君はボクの持ち込んだレッドスパークルのヴィンテージ・ラディック・ドラムセットを子供達の前で魂を込めて思い切り叩いてくれました。

ほんとうに、あの時は、これが最後になるかもしれないとさえ思えていました。

あの日集まってくださったお客さんもまた、大きな余震が毎日毎日頻発し、いつ停電になるか、いつ電車が止まるかも分からない状況の中で集まってくださり、この日のライヴはボク達にとって生涯忘れられないものになったのでした。

この後。

ボクは数々の奇蹟を体験することになって、Donichi 君はそれを我が事のように祝福してくれたのですが、実はボクはこう思っていました。

今は、とても大変で出口が見えないだろうけれども、君にも必ず起きるハズだ。
なぜなら君も。
マークファーナーからのメッセージ、 “Peace!”を受け取ったじゃないか。

と。

ボクがアメリカに渡り、夢を叶えているその間も、Donichi 君は仕事の休みを使って何度も何度も被災した御実家へ通わなければなりませんでした。

数年前に亡くなられたお義父様の遺品ともいえる凄まじいまでの質と量を誇るオーディオコレクション(お義父様はオーディオ・メイニアックだったのです!)を、どうしても処分しないと壊れた家屋の建替えが進まないという事情があったのでした。

  

  

  

これらのオーディオ機材が 4tトラック一台分もあって、中には1本の重量が 150kgもあるヨーロッパのアンティーク家具の様なスピーカーや出力300Wで重量42kgもあるパワーアンプも。(驚!)

余談ですが、築40年の実家に特注で造られたオーディオルームは、坪当たり1t の荷重がかかっても共振しない設計で建てられていて、他の部屋が今回の地震で土台が崩れ建て替えを余儀なくされたのに、オーディオルームだけはビクともしなかったそうで、そのおかげで建て替えに着手できるまでの震災後の約3ヶ月間を家族は家で過ごす事が出来たのだとか!

40年前に「いつか必ず、1本100kg超のスピーカーを手に入れるぞ!」
と家を新築されたお義父様の “メイニアック魂” が最期に残してくださったもの。

同じヲタクの匂いのする、お義父様を慕っていた Donichi 君にしか、その処分を担うノウハウの持ち主が居なかったワケです。
永い人生を賭して収集してきた大切な機材 (トンデモナイ価値の名器の数々!)を、ひとつずつ丁寧に丁寧にメンテナンスして新しい主を探す作業は、気の遠くなるような仕事だったに違いありません。

そして全ての機材が引き取られて行った後に手元に残った“形見”は、家屋の建替えに役立てられたそうです。

「お義父さんは、亡くなられても尚、こちらに残っている家族を守った。」
誇らしげに語る Donichi 君は。。。
いつになく、ちょっとオトコマエでした。(笑)

いつになく! ( 2回言っておこう )

カクシテ。

ここから、ドンイチ・ブリューワーの身の上に、“Peace” が訪れるまでに、さほど時間は要さなかった事は、皆さんご察しのトーリです!
先ず、がんばった彼に、お義母様が“形見”の御裾分けを手渡してくださったそうです。

以下、Donichi君本人の手記より。

 

思いがけない臨時収入に、「今年の正月は家族でのんびり温泉旅行にでも行こう!」と思っておりましたが、2011年も暮れに押し迫ったある日、嫁さんと子供たちは忘年会で留守。

独りぼっちでふと覗いたリサイクルショップに赤っぽいドラムセットが、積まれていました。
珍しいなと思いつつ、よくよく見てみるとすすけて黒ずんではおりましたが、色はレッドスパークル、ブランドはLUDWIG、しかもキーストーンバッジがついている。
眺める事30分どっからどう見ても、ドンブリュ−ワーが1971年に嵐の後楽園で使っていたのと、まったく同じセットです。

20年以上探して、一度もお目にかかった事のない憧れのドラムセットが、突然目の前に現れました。

しかも値段は、頂いた御裾分けの十分範囲内(予算内?)。

卒倒しそうになるのを押さえながら、興奮と感動で震える手で携帯電話を握りしめ妻にメールで交渉です。

ドンイチ「忘年会楽しんでますか? ドラムセットが欲しい。 パパ」

妻「楽しいよー。子供たちもはしゃいでるよ。 買えばいいじゃん。 ママ」

ド「美味しそうなものも沢山並んでるんだろうね。 そんなこと言うとホントに買っちゃうよ。 パパ」

妻「唐揚げ美味しい、ビールがススム。 だから良いって言ってるでしょ!。 ママ」

ド「ごゆっくり。気をつけて帰ってきてね。 アリガトウ。 パパ」

かくしてほろ酔い気分で帰ってきた、嫁さんと子供たちが玄関先で見たものは・・・

 

 

これはもうハードロックの神様とお義父様がタッグを組んで脚本書いているとしか思えないよーな
“奇蹟”が、ほんとうに起きてしまったのです!

ちなみに。
ボクの人生で、レッドスパークルのヴィンテージ・ラディックどんずばサイズなど見たことがないんですよ!

し・か・も。

相場価格30万円〜50万円もするハズのヴィンテージ・ラディックが、何箇所かメンテナンスを要するコンディションだった為に、相場の半額の、そのまた半額くらいなのですから、「これなら予算内だ!」となったワケ。
しかもメンテナンスが趣味とも特技ともいえる Donichi 君にとっては、これはもう、この日の為にメンテナンスの腕を磨いて来たとまで思えてしまうワケで。(笑)

ね。
御加護としか、表現できないでしょう。(笑)

他に言い換える言葉があるとすれば。

まさしく “Peace!” でしょ。

おいおい、住居スペースの問題はどうなったんだ? いったいドコに置くんだ!
という心配の声が聞こえてきそうですが、嬉しさで顔が緩みっぱなしのDonichi 君いわく、

「さすがに組み立てて飾っておくことはできないケド、このよーに重ねて置けば直系56センチの床スペースさえあれば所有することは出来るんだ! どうせ家の中ではうるさくてドラムは叩けないんだから、叩くときは家の向かいの貸しスタジオ(徒歩1分)に運び込めばいいんだよ。なんせヴィンテージ・ラディックは軽量だからね。うわっはっは!」

だそーです。(笑)

ほいじゃ、学生時代にドラムセットを手放したのはナンだったんだ!トカ。
他にもツッコミドコロ満載なんだけど、(笑) まーね。

あまりにも幸せそうな顔っていうのは、周りも手放しで祝福したくなるモンでして。
ああ、そういえば、ボクがコーフンして話すハナシを、彼も我が事のようにいつも祝福してくれてたなって、ハタと気付かせてもらえたりね。

考えてみたら、30年前に彼が手放したドラムセットも赤でした。
当時もボク達は一緒にバンドをやっていたので、その赤いドラムセットにはボクにとっても懐かしい思い出がたくさんあったんだけど、ボク以上に、この30年もの間、自らに言い聞かせドラムセットを手に入れることを諦めてきた Donichi 君が、ようやく、2番目に手に入れたドラムセットもまた赤かったっていうのも不思議な縁を感じます。

これがそのドラム。

そこから何年もの時間が過ぎて。。。。

たしか1998年頃から、2人で始めたこのサイト。
いろんな事がいっぱい起きて、その都度 「信じれば夢は叶うんです!」って言い続けてきたのですが、正直に言うと「これだけは無理だろ。」って思っていることも “当然” ですが多々あります。

たとえば。

なんぼ楽器オタクだからといって、見つけられない楽器もあれば、身分不相応な高額の楽器を買うこともできません。住居に入らないサイズの楽器(ドラムセットとか、ハモンドオルガン&レスリースピーカーとか)は、当然ですが所有する事はできません。

でも。

信じていれば、諦めなければ、必ず夢は叶うんですよ!

Donichi 君の手に入れた、ドンブリュワーと全く同じサイズのレッドスパークルセットの解説は
Don Brewer Collection (近日公開)を御覧ください。

≪ 後書 ≫

ボクと Donichi 君のヴィンテージ・ラディックを一同に会した、
その名も、“ Vintage Ludwig Maniac ”を公開しています。

そ・し・て!

まだまだ、この Egg Man の奇蹟は続きくのです!
次は、幅72センチしかないウチの廊下を通らないハズの 「ハモンドオルガンの巻」です。(笑)

 

written by Eiji Farner

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