S. D. Curlee 「エス・ディー・カーリー」と読みます。 Fender/Gibson の2大メーカーが圧倒的なシェアを誇った70年代後期のエレキギター市場に果敢に挑み、ミゴトに散ったアメリカの新興メーカーのひとつです。 ヘッドからボディエンドまで一体化したスルーネック構造とか、ブラス(真鍮)削り出しのパーツを使用してひとうひとつの部品の性能を追求しつつ高級感を演出したり。 当然、日本国内メーカーからもこの流れを受けたオリジナルデザインのギターがたくさん発売されるのですが、当時の日本は圧倒的にコピーモデル崇拝の時代でしたし、それらの国産オリジナルも元ネタはアメリカ発の新興メーカーの手法を真似ているギターが多かったように感じていました。売りやすいコピーモデルを売りつつ、どこかで見たようなオリジナル。。。 で。S. D. カーリー。 そういう時代にシカゴ(だっけ)から登場したのですが、残念ながら日本にはほとんど紹介すらされませんでした。(笑)
これが。
こうなります。衝撃的な構造です。
どのくらい非常識なデタッチャブルかを説明する為に、ストラトのネック・プレートと並べてみました。 どうです。誰がどう見ても、S. D. カーリーの勝ちです。 で。更にっ。 90年代になると、古いGibsonのセットネック構造が現行モデルより、ホンの数ミリ深く組まれていたのを称し「ディープ・ジョイント」なる言葉が生まれ、ディープジョイントの方が良いんだぜ。ディープジョイントだから値段が高いんだぜ。的なことを語られる方々にたくさんお会いしましたが、これを見れば、彼らは裸足で逃げ出すことでしょう。 安いのに、深い。 ミリ単位ではなく、インチ単位で深い。 そしてこの、他に類を見ない“王者の構造”、当時、日本のメーカーがオリジナルモデルを開発するにあたり、アメリカの新興メーカーの手法を真似た。と申しましたが。 誰も真似、しませんでしたっ。(爆) メーカー創始者のランディ・カーリー氏が、自身の名前の前に、“S.D.” と付けたのは、 さて。ここはグランドファンク・マニアック。何がどうして悲しき王者S. D. カーリーなのか。GFRと何の関係あるのかを説明せねばなりませんね。 それは1976年に一度解散したGFRが、1980年に突如“復活”し、その翌々年、日本武道館に帰ってきた、記憶にも新しい「アノ日」。
で、ロッキンf という雑誌のインタビュー記事を読んで、S. D. カーリーの名前だけは知る事トナルのですが、あれから30年近く経った今もまだ。 ちっとも情報が無いっ。(爆) だいたいS. D. カーリー自体、使っているのが当時のナイトレンジャーとデニス氏だけですから、どんどん存在感も薄れ。。。80年代といばインターネットこそ無いものの、70年代とは比較にならない量と速さで海外の楽器事情も流入してきた時代なのに、完全に蚊帳の外に取り残されたのがS. D. カーリーなのです。 これぞ80年代のメッセンジャー。 こうなると燃えるんですね。 ようし、いつかはS. D. カーリーのベースを買うぞ!と。 で。結論。 たぶん、デニス氏のプレベ・シェイプは、特注品か試作品だろう。と。 ところで皆さんは、その復活劇を飾った、80年代最強の名盤中の名盤 『Grand Funk Lives 』 はお好きですか? なぜ、そんな事を尋ねるかというと、好き嫌いどころか、「聴いたことがない」「あんまり聴いてない」という方が以外にも多いんです。 70年代のGFRアルバムがあまりにも強烈であった為に、そしてメル・シャッカーのベースがあまりにも強烈であった為に、メルの居ない80年代GFRを聴かない方が多いという気持ちは理解できます。 ですが。ここで断言します。 1981年に発売されたアメリカンロックのアルバムの中で、一番良い! TOTO、ジャーニー、フォーリナー、ナイトレンジャー、etc,etc, いっぱいアリマスが、グランドファンク・リヴスが一番良い!のです。 ボ・ク・は!(爆)
そして2曲め以降、最後まで。いわゆる「捨て曲」が無い名曲ばかりのアルバムなのです。 76年解散時にピークを迎えたMARK尊師の最強ヴォーカルは更に磨きがかかり、ストラト炸裂のギタープレイも強烈です。 いちばんハードロックギターを弾きまくっているアルバムが、このリヴスかもしれません。 70年代と80年代ではロック界全体に大きなサウンドの変化がありました。そのひとつがキーボードの進化(?)です。それまで「大きい、重い、メンテナンスが大変」だったキーボード類が、あっという間に進化著しいデジタルシンセに取って代わられたのです。 「ああ。グランドファンクも80年代ロックにお色直しか。」と、思われた方も居らしたようです。 が。それならボクは薦めませんっ。 そーゆー時代に、あえてトリオで復活したGFR。他のお色直しバンドとは根っこが違うのです。 だってトリオだもんっ。 あえて3人編成で復活したという事の意味はアルバムを聞けば聴くほどに分かると思います。 デニス氏に話題を戻しましょう。 黒人のようなグルーヴを生まれ持つメル氏だからこそ、多くの信者が惹きつけられた70年代GFRと、デニス氏加入後のGFRは確かに違います。 天才メルと比較されてしまい、何かと批判されガチなデニス氏ですが、実はここで言うまでもなく素晴らしいプレイヤーなのです。(でなければGFRには加入できませんよね) そして、ここで、当サイトの本領発揮です。 初期のメル氏のエクゾースト・サウンドは、ノーマルのFenderジャズベースでは出ない。と、このサイトを読んでくださった誰もが知っています。(Mel Mod Jazz Bass 御参照) いーんですよ。S. D. カーリー。ホントに。 当時、最も強力と謳われた DiMazio社の特注PUと、ブラス削り出しブリッジが“ネックの上に載っている”という、これはもう見た目の印象通りの長すぎるサスティンを誇ります。そしてほぼ丸太のような極太グリップのネックはショートスケールなのですが、このネックが異常なまでの「太さ」を生んでいます。 史上最重低でありながら、流行のスーパーロング・スケールどころか、ショートスケールです。短いネック。しかし丸太のように極太なグリップ。そしてショートスケールゆえに暴れる弦は、太いネックを通じて余すところなくブ厚いマホガニー製のボディに響き渡り、その震動は規格外れの大出力PUによりアウトプットされアンプとスピーカーを極限状態に曝す。という、今の時代の常識を覆す凄まじいベースが、Gibson EB-1 なのです。 で。こりゃやりすぎたな。とGibson社が反省し、時代は現在に至るワケです。(たぶん) 昔々、いちばん最初に作られたベースが、いちばん凄まじい低音じゃった。。。あまりの低音に村人達は体調を崩してしまい“山”から裸足で逃げ出したそうな。やがて時を経て世の中はアリキタリな心地良い低音に飼い馴らされ、心地良い低音という枠の中でクリオリティ云々を語るようになっていくのじゃった。。。 おっと逸れた。で。S. D. カーリーです。 コントロールは、1Vol. 1Tone。で、下のほうのミニスイッチは、Toneのバイパス・スイッチです。 この写真のコッチに倒すと、Toneが使えて、ネック側に倒すとバイパスです。 バイパスすると、ゴリっとしたプレベの、メイプルネックの、アノ音がストレートすぎるほどに炸裂します。アルバムを聴くと、デニス氏はToneを調整して多彩なサウンドを出していますので、なのでコッチです。 あ。そうそう。80年代GFRのサウンドは、ドン・ブリュワー先生のドラム・スタイルが強烈にタイトになった。と評されていますが、これも実はデニス・マジックなんですね。 ドン先生のキックは、ハードロックとしては他に類を見ない程“ウラ”が多くて、しかもそのフレーズが強烈にハネる。なので、ズッシリというより、疾走感というか。。。で、そのカッコ良いキックに天才メルの黒いグルーヴがカラミつく。で、オンリーワンなGFRグルーヴが生まれるワケですが、デニス氏のアプローチは、ナントそのカッコ良いキックを完全なユニゾンでトレースするというモノなのです。 おそらく、あえて、天才メルの編み出したオンリーワンを追わず、マーク・ドン&デニスとしてのGFRを構築したのではなかろうか。と、ボクは絶賛しています。 ドン先生がスタイルを変えてタイトになったのではなく、元々ドン先生のドラムは、強烈にタイトに成り得るポテンシャルが秘められていた。という事をミゴトに世間に知らしめたのです。 で。で。前述の1曲目。「Good Times」です。 普通、ギターとユニゾンで行くメインのリフまでもキックとのユニゾン優先です。 聴き比べて頂くと面白いですよ。 やたら長いギターソロと、やたら短いギターソロ。キックは同じアプローチなのに、ベースはそのキックに、方やカラみ、方やナゾル。で、こうもドラムが変わって聞こえる。という。 しかもその“間”に絶妙なビート感で切り込むMARK尊師のギターのカッコ良さたるや。 デニス氏という人は、たぶんGFRのファンだったんですね。そーゆーコトを知っているからメル氏の焼き直し、マネゴトに走らなかったのではないかな。 あ。S. D. カーリーの説明の途中だった。(爆) ここまでEB-1とS. D. カーリーは似ていながらも、残念ながら違ったトコは、Gibson社のようにやりすぎを反省する事ができず、現在に至れず。(爆) この、いらないくらいの暴れるサスティーンを、ピック弾きでムリヤリに押さえ込み、(というか、押さえなければサスティーンが止まらないワケね)、その結果、いわゆるミュート・サウンドでありながらブッ太く、重心の低い「デニス・サウンド」が生まれるワケです。 「ボッ」って弾いたら「ブッ」って抑える。(笑) そのカッコ良さもまた、「Good Times」で発揮されています。相当にミュートが上手い。(なので必聴。とボクは言うワケ。) あ。余談ですが、82年来日当時の使用アンプは、Peavey です。 「ああ、もうGFRのステージに、伝説のWESTは存在しないのか。。。」と、ちょっと寂しかった。。。のですが。ナント。デニス氏。 ここでも「夢は現実になるんだ。」って、GFRマジック炸裂です。 GFRのステージには、伝説のWEST(の元社員)が存在していた。というオチで。 GFRの研究はホント楽しいなぁ〜。 ≪ 後 記 ≫ 余談ですが。 と言いながら実は当時、殺し文句に酔い、コレを買って、いまだに手離さないで大事にしてます。(笑) って、ナンボナンデモ時間かかり過ぎだろう。。。
≪ 緊急告知! ≫ S. D. カーリーを弾いてたら、デニスベリンガーになりたくなりました。 で。で。 80年代グランドファンクのトリビュート・バンド 『 What's Funk Lives!』 では、メンバーを募集します。 GFR大好きなドラマーも大募集中。 初期GFRトリビュートバンド 『ど・ファンク・マニアック』 さんと対バンで、GFRフェスティバルを開催しましょう。 これは、真面目な募集です。メール待ってます! 『What's Funk Lives!』 メンバー募集係まで。どしどし。 → info@grandfunk-maniac.org あ。Set List は一部決まってまして、 Good Times あと何やりたい? この募集告知が掲載されている間は、募集中。って事ですからね。 by エージ・ファーナー(またの名をエージ・ベリンガー) S.D.カーリー迷宮の旅は、まだまだ続きます。 The “DENNIS MOD” S,D,Cuele |